ラベル DAW の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル DAW の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022/08/15

YAMAHA HPH-MT8の購入をお考えの方は、是非試着(視聴ではない)を

 約1年ほど前から機会があれば絶対視聴したいと思っていたヘッドホン、YAMAHA HPH-MT8を先週購入した。Amazonの「おすすめ商品」に唐突に出て来たのを見ていったん天を仰いだが、1分と経たずにポチってしまった。結局視聴はしないままだった。

 さて、YAMAHA HPH-MT8はスタジオモニターヘッドホンと銘打つだけあって、なんとかベースとかいった類の特定の周波数域の再生音量をブーストするような味付けはされていない。そのうち別エントリで触れることもあるかもしれないが、私の耳の特性には昔からちょっと癖があって、低域(400Hzぐらい以下)の感度が周囲の人より高い。以前は感覚的にそうだとしか言えない状態だったが、最近はヘッドホンの再生特性をイコライザ経由で自分好みに調節できるアプリ、ツールが有り、自分の耳の特性が定量的に測定できるようになった。なので、今は一種の測定結果に基づいて自信をもってそうだと言えるようになった。

 そんなアプリの代表がSoundIDで、PC(これだけは有料)、スマホ、タブレット、携帯音楽プレーヤーと、ヘッドホンで音楽を聴く可能性のあるデバイスには漏れなくインストールしてある。SoundIDを使うことで、ヘッドホンが違っても「自分好みに聞こえる」状態を実現できる。要は、なんとかベースの類を全てキャンセルできると言うことだ。ただし、そのような処理のためにCPUパワー(≒電力)を余分に食うし、デバイスによっては目に見えて分かる再生遅延がある。

 YAMAHA HPH-MT8への期待は「SoundIDを介さずとも使えるもの、SoundIDが不要なもの」だった。この観点からはほぼ満点だ。PCでDAWを使う場合など、モニタリング用途ではもうこれ一択になるだろうし、ワイヤードで問題無い自宅での普段使いにも重宝しそうだ。

 が、問題が二つある。

 一点目はどうしようもない、残念なもので、ケーブル、ハウジングやカップが衣類などに触れて擦れたり、それらに指で触れたりした際にカップ内に響くゴソゴソといった音が所有するヘッドホンの中ではひときわ大きい。頭が埋もれるようなクッションと併用していると、頭や体をちょっと動かすだけでゴソゴソ聞こえて煩わしい。

 二点目は全く想定外だったもので、アームを全く伸ばさない最短状態でもカップの押し付け圧が足らず、ヘッドフォンが直ぐにずり落ちてしまう。挙句には耳たぶ上部にぶら下がっている感じになってしまい、耳たぶ周りが直ぐに痛くなる有様だった。なので、現在はミニタオルの「リボン」を付けている。脳天に接する部分に7~8mmのクッションを入れて、この脳天でもヘッドフォンを支えようという苦肉の策だ(写真では少し片側に寄せてあるけど)。

 自らを小顔とは言わないが、なりが小さい(衣類のサイズはSのほぼ上限)ことは純然たる事実だ。それでも二点目の問題はちょっとマズい気がする。例えばあくまで個人的な経験則だが、私よりも頭の小さな女性は成人でも少なくない。小柄との自覚がある方でYAMAHA HPH-MT8の購入をお考えの向きには、是非試着(当然ながら視聴も)をお勧めする。

2021/11/25

さぁベンチマーク、もとい2021ブラックフライデーの時間だ!

 ども。近々は第一戦で頑張って働いている人達の足元をしっかり支える、Intel Alder Lake-Sコアで言えばEコアのような働き方を目指しているブログ主です。このbig-LITTLEハイブリッドアーキテクチャーにはなんだか萌えつつ燃えるものがある、まだ手は出さんですけどね。遅ればせながらComet Lakeコアが効率良く使える環境を整えたばかりと時期も悪いが、まずもってお金に余裕が無い。その一端は・・・

 ブラックフライデーセールを知らせるDAW周りのネットショップやメーカーからのメールの数が今年は一段と多い。これも新型コロナ禍の影響なのだろうか。しかも購入時期をうかがっていた製品の価格が軒並み最安値を記録、一日限定セールなどもあって、ここ数日はポチるべきかポチらないべきか悩む日々が続きそうだ。

 ちなみに「これを買ったら自分が駄目になる、考えることを止めてしまう」ことを信じて疑っていなかったDAWプラグイン、Scaler2は火曜日に購入済みだ。ディストリビューターなどの直販ショップや日本から使えるショップが限られていた10年以上前に良く使っていた老舗のショップでの久々のお買い物だったが、いつの間にか導入されていた一種のポイント制の下で溜まっていたポイントのおかげでセール価格から更に3割引きで購入できた。現時点では、「ここはまだ改良が必要」と広く認識されている特定の機能の至らない完成度やバグの所為でさすがに「考えることを止めてしまう」には程遠い状況だが、当然その辺りに手が入ってくるだろう次バージョンになると分からない。ただし私の楽曲製作ワークフローに対しては、Cubase Proへのコードトラックの実装以上のインパクトがあったのは確か。

 従来からDAW用音源やプラグインなどの購入は12月が多かった。これは海外のデベロッパーやディストリビューターが12月〆の会計年度を採用していることが多く、年度末の売り上げ積み増しを図ってセールを実施するからだ。故にセールの主戦場は純粋なショップからデベロッパーやディストリビューターの直販ショップなどへ動きつつ、年末まで続く筈だ。

2021/11/12

いったんさらば!カニのマークのアレ

 

 本エントリでのカニのマークのアレとはRealtek社のオーデオチップ群を指している。Realtek社のオーディオチップ(サウンドチップ)はPCマザーボードのオンボードオーディオチップとして広く使われていて、かつては「安かろう悪くなかろう」なPCを量産してきたDell社のPCの多くでもそれは例外ではない。だが2020年前期型XPS 8940、テメェは駄目だ。「安かろう悪かろう」では話にならない。

 メインPCである2020年前期型XPS 8940のオンボードオーディオチップはまさしくカニのマークのアレだ。そこまではまぁ良い、カニのアレの音はさして悪くない。特にHDドライバが提供されるようになってからは本当に良くなった。DAW使いでありながらオーディオインターフェース無しでこれまでやってきた理由の一つはまさこの「悪くなかろう」な点だったと言えよう。加えてオンボードチップ故の使い勝手の良さがあった。外付けインターフェースのようにケーブルを引き回す必要もなく、スピーカーとヘッドフォンとの切替のスムーズさには文句のつけようもなかった。

 ところが、2020年前期型XPS 8940ではWAVESうんたらかんたらとか言うクソの役にも立たないオーディオ処理ソフト及びサービスがプレインストールされるようになった。結果、純粋なHDドライバが使えなくなったりMicrosoft社のジェネリックドライバーとの互換性が著しく低下したりしただけでなく、クソのためのソフトウェアレイヤーのせいか音が悪くなった。音の輪郭がボケる、所謂音の粒立ちが悪くなるってやつだ。

 かつてのカニのアレの音を取り戻すべくクソ関連のサービスの停止や仮想ハードウェアの削除などを暫く試みたが、副作用が余りに多くてオンボードオーディオチップの良さが完全にスポイルされる形になってしまった。

 まず、PC起動時にスピーカーなりヘッドフォンなりが接続されていないと、オーディオ入出力用のエンドポイントが作成されない。このため、例えば起動後にヘッドフォンを専用端子に接続してもヘッドフォンが認識されない。この場合のエンドポイントとはハードウェア的にはヘッドフォン端子だから、「端子無し」と認識されている状態で端子に何を刺してもシステムが反応しないのは当然だ。この挙動、どう見てもプラグアンドプレイの否定にしか見えない。従来の大抵のPCでは、ヘッドフォン端子にヘッドフォンを繋ぐと自動的にスピーカー出力がミュートされてヘッドフォンからしか音が出なくなったりしたものなのだが、それで何か問題があろうか?

 確かにWindows10になってからはオーディオ出力先をユーザーが完全に選択できる方向で仕様変更が為されてきていて、最近はその方向で良いと思うようになってきているのだが、起動後にヘッドフォンやスピーカーを接続しても認識しないとか、起動中にヘッドフォンが変更できない(変更前のヘッドフォンを端子から外した時点で端子に対応したエンドポイントが削除される。このため、変更後のヘッドフォンが認識されない)では使い勝手が悪いにも程がある。

 ただ起動中にヘッドフォンやスピーカーが変更できる結線方法はある。エンドポイントの削除は物理的に端子からジャックが抜かれることでトリガーされるので、端子に延長ケーブルを常に接続しておけば、延長ケーブルの端子にヘッドフォンやスピーカーのジャックを抜き差ししてもエンドポイントは削除されない。もっと言うと、起動時に延長ケーブルだけでも良い(ジャックの寸法、形をした全くの別モノでも良い)ので刺しておけば、延長ケーブルが接続された端子に対応したエンドポイントは生成される。

 この時点でもう面倒臭いと言うか、技術的、仕様的に大変筋が悪いのだが、まだ問題は終わらない。WAVES何とかと言うクソに関わるサービス、アプリなどを丁寧に削除することでかつての音をかなり取り戻せるのだが、Windowsアップデートでカニのマークのドライバーがアップデートされると、上記の作業は元の木阿弥となる。停止したサービスは自動起動されるようになり、削除したサービスやソフトウェアコンポネントも復活してしまう。DELL社のツールにアップデートさせようものなら、WAVES(略)なクソアプリまで再インストールされてしまう。レジストリも汚れるばかりだ。

 で、先週の中ごろにカニのアレのドライバーのアップデートが複数回入ってうんざりしていたところに来て、アップデートの後ににこれまで想像もしたことが無い状況が出来して正直キレてしまった。音量の左右バランスがおかしくなってしまったのだ。例えば音楽を聴いたとすると、本来センターにあるべきボーカルやバスドラの音が左方向に1/8~1/16ほどズレた位置から聞こえる有様だった。「バスドラ、ベース、ボーカルがど真ん中配置」な自作曲でも確認したので間違いない。「さらば、カニのマーク」と心から思った瞬間だった。

 それから1週間後の今、メインPCの上にはNative Instruments社のオーディオインターフェースKOMPLETE AUDIO 1が乗っている。安いし小さいし基本的に録音も配信もしない人間には機能的に十分だ。さらにまともなASIOドライバーの提供を期待しても良いだろう。スピーカーもヘッドフォンももはやそれに繋がっている。PC本体のオーディオ端子には万が一を想定してまだエンドポイント生成のために延長ケーブルを接続しているが、この3日程のKOMPLETE AUDIO 1の使用感に照らせば、それら延長ケーブルは早々に抜かれることになりそうだ。

 と言う訳で、低価格品ではあるもののオーディオインターフェースの導入で多数なりともDAWユーザーっぽい機器構成に寄ってきた。専用のASIOドライバーの出来も良いようで、DAW(Cubase Pro11、FL Studio 20)やスタンドアローンモードのソフトシンセの動作も軽快だ(20ms未満の遅延はさすがに短くて、私の目と耳の組み合わせでは遅延は認識できない。まぁディスプレイのリフレッシュレートが60Hz(16ms)なので、遅延による画面と音とのズレは1フレーム以下ではある)。SoundID Referenceとのコンフリクトも起きていない。Windows Audio、ASIOともに音の粒立ちは最新ドライバーが適用されたカニのアレよりも明らかに良い。もちろん、音量の左右バランスもばっちりだ。ああ、「当たり前」とは何と素晴らしいことなのだろう!PCの電源オン・オフ時やASIOモードとWindows Audioモードの切り替え時にスピーカー等から出るノイズはちょっと大き目で多少不快に感じることもあるけどね。

 何も上手く動かせないカニのマークのASIOドライバー、SoundID ReferenceやDAWをクラッシュさせたり音声出力の遅延時間を増やすばかりのWAVES(以下略)とこれでおさらば!

2021/06/08

実験計測屋の考えるヘッドフォンの原音再現性に関するうんたらかんたら

 本題は「さて、」以降です。初老者の独り語りなんか読みたくない人は「さて、」まで飛んでね。

 私はサラリーマン実験屋で、一時期水中の圧力変化測定を良くやっていた。背圧は大気圧から100気圧近く、取得しないといけない圧力振動の周波数範囲は数Hz~10kHzと広かった。ちなみに高圧用の検出器の価格は私の年収並みに高い・・・つまり実験も測定も失敗できない。敢えて測定結果に値段をつけようとするとかなりの額になるが、他社が持たないデータの取得は自社の競争力の源泉ともなるので一種の投資と見做される。許認可が絡む事項ならば、ワクチンの治験データに相当すると思ってもらって良い。データが無ければ認可が必要な市場には参入すらできない。

 私の属する企業の風土のひとつに「一人一芸」がある。これは予算の流れから見た場合の企業構造、「自分が一番働く社長+社員1名の中小企業の集まりみたいな組織」において自分が喰いっぱぐれない、干されないための差別戦略だ。信号処理に関わる知識の取得や実践、実装と実績や技術レベルのアピールは、文字通り「生活のため」な訳だ。このような文化下において、技術上の嘘、誤魔化し、実際を超えるアピールが発覚した際のダメージは深刻だ。厳しい文化とも言えるが、個人的には極めて公正な文化でもある点を強調したい。そして、ここは日本的としか言いようがないのだが、上記のダメージに対して浪花節がセーフティネット的に作動するため、当人が状況を正しく認識して適切に振る舞う限りにおいては職場の雰囲気は全く悪くならない。

 この文化、30年単位で見ると様々な制度変更を経て壊れかけては再興するを繰り返してきたが、そろそろ限界かもしれないとも思う。それは職場に百花繚乱の如く存在する「一芸」の源泉に「詰め込み教育」を見るからだ。新しい体験にあたって「あ~昔なんか聞いたことがある、やったことがある」といったフックは、それらを与えられたり、自ら得るような行動をしてきた人間の中にしか存在しない。実感としてあるのは、この種のフックの少なさは「ゆとり世代」に顕著であることだ。更に踏み込むと、フックをほぼ持たない者とそれでも従来世代並みにフックを持つ者とからそれぞれ構成されるクラス(階級)が実は形成されていて、両クラス間でのコミュニケーションは成立しないので完全に隔絶状態にある、と見ゆる。100%近い与えられたフックが使われないことの方が多かろうから確かに効率は悪いだろうが、「詰め込み教育」は「子供の将来の可能性を狭める方向には作用しない」までは言って良いと思う・・・って何の話してんのか。

 さて、

検出器だけでなく測定に関わる全ての機器の入力信号/出力信号の時間変化は相対的であっても一致しない。信号波形は変形する。これはそれぞれの機器が「反応遅れ」を持っているためで、最終的な測定結果は「反応遅れ」を補正したものとなる。補正に必要な計算量は大したことないが、それぞれの機器の「反応遅れ」は個別に自分たちで測定しておくか、他者の測定結果を買うかする必要がある。

 補正はデータ収集後に実施し、フーリエ変換を用いて周波数領域で行う。周波数領域と言うと難しく感じるかもしれないが、横軸が周波数のグラフは周波数領域で表示していることになる。だから大抵のDAWユーザーは、イコライザー操作やスペクトル分布を見たりすることで、周波数空間とは日常的に接している筈だ。計算手順自体はデコンボリューションやコンボリューションなどと呼ばれる周波数領域での掛け算、割り算操作である。リバーブプラグインが使っていたりする計算操作なので、これらの言葉自体はやはりDAWを触っている人なら耳にしたこともあるのではないかと思う。これらの操作は上記したように計算量は少なく、加えてデジタル計算でも丸め誤差の範囲で理論解と一致する結果が得られる精度の高いものだ。

 ただし、信号波形を直接追うような時間領域では、この種の補正は簡単ではない。別の言い方をすると、この種の信号処理のリアルタイム処理を精度良く実行するにはコストがかかる。音響機器の値段と音質にどうしても関係が出てしまう原因の一つは、まさにここにあろう。

 つい最近、ネット上でヘッドフォンの音質や性能に関わるやり取りを人とする機会を得た。私は信号処理の経験からとある個人的な仮定について簡単に述べたが、DAWとか触る割にはオーディオ機器やその周囲の知識が絶望的に無く、かつそもそも興味が全く無いので、文章だけのやり取りだけで正直話が嚙み合ったかははなはだ心もとない結果となった。あらためて書いておこう。ヘッドフォン、スピーカー、アンプなどは音響信号をリアルタイム処理する機器だ。

 以下では、件のやり取り内容のうち、もしそうだったら嫌だなと思うヘッドフォンの再生特性についての内容のみ、模式図を付して簡単に説明しておこうと思う。真面目なところ、ドローソフトを使ったり技術寄りの文章を書いてみたりと、病気休暇からの復帰を睨んだリハビリ作業の意図が強いんだけどね。

 いきなり音が立ち上がる波形(例えば、矩形波の立ち上がり部)の原音信号として、その信号を音響機器で再生する場合を考える。ここで音響機器が原音信号をそのまま再現できれば皆が幸せなだが、リアルタイムで処理しないといけないためにそうは問屋が卸さない。

  一般論として、漠然と組んだ(機能要求だけを満たした)再生用回路(アンプ→スピーカー/ヘッドフォン)では、再生信号に「時間遅れ」が生じる。この状態を模式的に示しているのが図(a)だ。再生信号は原音信号の急激な変化に追従できず、まず立ち上がりで遅れ、水平となるタイミングも遅れるのでオーバーシュートも発生している。すぐに分かる人も多いと思うが、これは勾配がめちゃくちゃ大きいローパスフィルタを適用した状態と等価だ。高周波数が失われ、音の立ち上がりは悪くなる。そこで回路に手を入れる。部品は増え、部品ひとつひとつの質も値段も上がる。コスト制限があるような条件下で頑張って達成したい再生信号と原音信号との関係を図(b)に模式的に示す。立ち上がりでの遅れ、オーバーシュートともに小さくなっている。が、実際のところ、このような結果が得られる機器の実現には、マニアな方々の支払い能力に相当するコストが要求される。

 で、とある技術者は考える、「いや、音の立ち上がりの良い再生機器を安価に実現してみせる!」 と。私でも思いつく方法の一つは、特定の周波数以上の高周波数成分の原因を大きくするような帯域強調フィルタ回路を付加することだ。上述のように立ち上がりの遅れを引き起こす「時間遅れ」は、ローパスフィルタ適用と実質的に等価な結果を与える。だからローパスフィルタで失われたりゲインが減らされる周波数をプリかポストで補ってやれば良い、という寸法だ。結論から言うと、音の立ち上がりの問題は比較的簡単に解決できる。前提は、時間遅れはあるものの遅れ時間自体が安定した(周囲環境などに影響されない)回路が設計・製作できる一定レベル以上の技術力があることだ。対象の特性が不安定で変化しまくるでは補償なんてできる筈も無く、補償回路自体もやはり安定していなければならない。

  しかしコスト制限が厳しい(安い)場合、立ち上がりを良くすることと引き換えに捨てなければならないものがある。上述した「勾配がめちゃくちゃ大きいローパスフィルタ」の「めちゃくちゃ」は文字通りの意味であり、勾配は-∞(db)が理想だ。シンセのローパスフィルタは基本-12~-24(db)なので、コストを考えると-∞が如何に非現実的な勾配であるかが分かる。だが貧乏には変えられず、補正回路の帯域強調フィルタの勾配を-36(db)とかのレベルに抑えるとどうなるか。これは着目しているフィルタ周波数の付近で、ゲインを保たなければならない低周波数側でゲインが下がり、ゲインを0としなければならない高周波数側でゲインが0まで下げられないないことを意味する。結果として、原音信号の立ち上がり時などに高周波数のスパイクが多数現れる。このような再生信号と現信号との比較を図(c)に模式的に示す。スパイクはまさに理想と現実の差が可視化されたものなのだ。

 このようなスパイクはシンセの発振過程でも見られることのあるもので(例えば、本ブログ内手元のソフトシンセ、矩形波対決!)、シンセでkick音を作る際にはアタック成分として利用しない手は無い。

 音の立ち上がりが良いのは素晴らしいのだが、安さ故に図(c)の再生信号の如く明確なスパイクが現れるの音響製品に対しては、やっぱり頭を抱えてしまう。そういうものだ、と分かっている人間以外には何も良いところがない(≒何を期待してそれを買うのか?)からだ。 図(d)に模式的に示すように、所謂スパイク部分は「原音には無い足された音」になる。故に原音再現性の観点からは駄目駄目だ。

 もしこのような特性を与えられた「ヘッドフォン」が有ったとすれば、ここでは「そんなものは嫌い」と言っておこう。「原音に無い音を足して平気な姿勢」が一技術屋として受け入れられないのだ。スパイク音が付加された方が良い用途?があってその用途に使う分には良かろうが、そういうものなら単なる「ヘッドフォン」ではなく「○○専用ヘッドフォン」と区別を明確にすべきだ。「○○専用ヘッドフォン」ならば、専用用途以外の使用で問題が有ったってかまわない、と言うか問題が有って当たり前だ。単なる「ヘッドフォン」を求める客は、「○○専用ヘッドフォン」を購入候補から外すだろう。これで誰か不幸になる?

 実際問題としてスパイク発生は避けられないが程度問題でもあり、音の立ち上がりを多少捨てれば同価格でも低減可能だし、コストを積めば実質的に立ち上がりの良さとも両立できる。昔からある製品ならともかく、昨今の製品はデジタル処理部分も多い筈なので、未だにこの辺りが問題になるのもどうかとは思うのだが、なかなかに解決は難しいのか実装レベルの話は無知ゆえに分からない。ポストでの信号処理の知識だけからでは、考察レベルでもここら辺が限界だ。

 話は逸れるが、Sonarworks ReferenceやSoundID Referenceといったソフトウェアの登場で、少なくともヘッドフォンについては個別製品の周波数応答特性の違いの意味は失われつつある。ヘッドフォンメーカーが苦労して、自身のポリシーなり美学に基づいて実現した周波数応答特性を、例えば私のようなユーザーは、PC画面上を数クリックするだけで何の躊躇も無く別物に変えてしまう。ここで露になったのは、周波数特性を合わせても低価格製品の音は高価格製品のそれとは違うという単純な事実だ。ならば価格差に見合う価値は、周波数特定には宿っていないことなる。これは経験的に知っている人も多かろう。これが、本エントリで対象とした時間領域での信号応答特性が価格差による音の違いを説明できる因子(しかも本丸?)かもしれないと思う所以である。つまり、周波数応答特性、位相特性と既に来た以上、そろそろインパルス応答特性にも踏み込まざるを得ないだろうと考えているということだ。

 インパルス応答を利用したリバーブは既に多くのDAWの標準プラグインに含まれている。コンボリューションリバーブなどと呼ばれているものがそうだ。使える計算能力が上がれば、DAW或いはDAW周辺技術においてインパルス応答の適用範囲の拡大は必至だろう。デコンボリューション(コンボリューションの逆操作)の計算コストがリアルタイム処理で許容されるレベルになればDAWにもそれ以外の分野にも影響は大きいと考えている、と言うか私自身にすらアイディアが複数ある。

 宗教論争は嫌いなのでちょっと触れるだけにするが、PC用のスピーカーとして10年以上にわたり長さ25cm級のタイムドメインスピーカーを使っている。選択理由はインパルス応答特性の良さで、音量による音の変化が無く音の通りも良いし、左右分離も良い。配置に関して距離はちょっとシビアだが、省スペースで向きも自由だ。東日本大震災にも耐えた。ちなみに私は「タイムドメイン**」の**部分は「手法(テクニック、メソッドロジー)」だと考えている。PCモニターもそうだが、「0(ゼロ音量、PCモニターでは「完全な黒」を指す)」がちゃんと出る仕組みとなっているかは大事、インパルス応答特性も大事だ。 もちろん実装も大事で、駄目なタイムドメインスピーカーは本当にすべてが駄目だった。

 低~中価格製品でも「その辺」をいなすなり誤魔化すなりしつつ時にプラスアルファの魅力を製品に与えてきたのが「味付け」なのだが、そもそも押しつけを嫌うタイプの私のような人間が上記のソフトに触れれば、「味付け」の全否定から入ってしまうのは致し方ない。だが、全否定のための操作ノブを逆に回せば途端に「味付け」が露わになることも自明であり、特定の共通の比較対象を持ってヘッドフォン毎の「味付け」を文字通り味わえることも付け加えておく。

 あと、なんでフィルタの勾配でスパイクが出たり出なかったりするのか、という問題の説明は面倒くさいの割愛する。ただ、この問題は「フィルタの作り方」と表裏一帯の関係にあるので、デジタルフィルターの作り方やその考え方が(アナログフィルターよりも相対的に)分かり易くて参考になる。興味があれば「デジタルフィルター 次数」でググってみて欲しい。「窓(窓関数)」まで理解すれば、EQやスペクトル表示といった周波数領域の手法をどうやって時間領域内で取り使っているかも理解できる。「次数」がミソで、アナログオンリーだったかつてのハードウェアでのフィルター回路実装では部品の数を介して価格に直結したはずだ。

 最後におまけだが、 SoundID Reference for HeadphoneとSoundID for Listenerの組み合わせの登場は個人的に一線を越えてきた感がある。向かっている先は「再生機器や場所や時間を問わずに自分好みにカスタマイズした同じ音で聴きましょう」ってことですからね。私はiPodうち1台をSONY WH-1000XM3(Bluetooth接続)で聴いているが、周波数特性は自作のSennheiser HD599に似せたものにしてある。SONY WH-1000XM3の味付け(周波数応答特性)を全否定し、ノイズキャンセリング機能付きSennheiser HD599の感覚で使っている訳だ。レイテンシの発生は問題と言えば問題だが、音楽を聞くだけなら特に気にもならない。例えばワンチップ構成USB接続って感じでハードウェア実装されるようになったら、みんなでハックして特定のヘッドフォンを別のヘッドフォンで直接シミュレートするためのデータベースを構築しようぜ。

2021/05/25

SONY WH-1000XM3、DAWモニタリング用に復帰する

 DAW触ってる限りはモニタリング用ヘッドフォンを物色し続けるんだろうなぁ。

 で、エントリタイトル記載の状況発生の原因なのだが、もちろん一つではなくてざっくり以下の3点に集約される。

  1. DAW(Cubase Pro)を動かしているPCのBIOSがアップデートされたら、ヘッドフォン端子の挙動がおかしくなった。
  2. DAW(Cubase Pro)を11にバージョンアップしたら、BluetoothヘッドフォンがDAWのアウトプットに指定できなくなった。
  3. DAWのモニタリング用ヘッドフォンについて改めて考える機会があった。

 まず前段について簡単に記す。

 2019年に購入したヘッドフォンSONY WH-1000XM3は、ノイズキャンセリング機能には文句のつけようがないのだが、如何せん周波数応答特性に「味付け」が過ぎた。ここで言う「味付け」とはメーカーが意図的に施した周波数応答特性の調整を指す。低音の強調とかが典型的な例だ。味付けが過ぎることの問題は、聞こえる音が音楽の作り手、送り手が意図したものからどんどん離れていくところにある。逆から言えば、「味付け」が過ぎるヘッドフォンで「いい感じ」に聞こえる音は、他のヘッドフォンやスピーカーで再生した際に聞くに堪えないものになる可能性があると言うことだ。故に、SONY WH-1000XM3はDAWのモニタリング用ヘッドフォン、特にマスタリング時にはとても使えないと言う残念な結論に一旦至った。まぁ、下調べが足らんかったと言えばそれまでなのだが、まさかあの価格帯で、しかもノイズキャンセリング機能を売りにする製品で、あんな強い「味付け」が為されていようとは思わなかった。

 じゃあマスタリング以外での使い勝手はどうかと言うと、Bluetooth接続によるレイテンシ(ここでは、音の再生遅れ)が大きくて輪をかけて使えない。聞こえる音の音量などの変化とDAW上のメーターの上下動とのズレの所為だけで、私は数分で酔ってしまう。

 とは言え高い買い物ではあったし、PCならば周波数応答特性はいじれなくもない。そこで昨年当初に試したのがSonarworks Reference4 Headphone Editionと言うソフトの試用版だ

 このソフト、測定結果に基づくプリセットデータがあれば、ヘッドフォンの周波数応答特性を「味付けが無い状態(以下、周波数応答特性がフラットな状態、または単にフラットな状態、と言う)」に限りなく近づけてくれる。別の言い方をすれば、作り手、送り手が意図した音に近づけてくれる(筈)。あくまで「私の耳」での話だが、ソフトを介して特性をフラット化したSONY WH-1000XM3とSennheiser HD599(半開放型)との音は様々な音源で区別ができなかった。敢えて分かる差があるとすれば、クローズハイハットのような高周波数を含む音の輪郭がSONY WH-1000XM3の方がはっきり聞こえる(粒立ちが良く聞こえる)ぐらいだろうか。が、これは密閉型+ノイズキャンセリング機能のおかげが大だろう。とは言えBluetooth接続のレイテンシの大きさは如何ともし難く、加えてSonarworks Reference4を介することでも追加のレイテンシが発生するから、やはりDAW操作時のモニタリング用途には使えないとの結論に至った。

 ただ、DAW操作時のモニタリングのメイン機として使っているSennheiser HD599の周波数応答特性にもSonarworks Reference4を介せば私の耳でもすぐ分かるレベルの「味付け」は有ったので、暫くしてSonarworks Reference4 Headphone Editionを購入した。ちなみにこのソフトにはDAW用のプラグインも同梱されている・・・と言うか、本製品の真価が本当に問われるのはDAW上でだろう。

 これでやっと前段の説明終了だ。DAWのモニタリング用途も意図してSONY WH-1000XM3を購入したものの、1年以上も塩漬け放置状態となっていたと言うことだ。では、SONY WH-1000XM3の復帰?を促した上述の3つの原因に触れていこう。

 まず原因その1。私のメインPCはDell社の2020年モデルなのだが、最近うっかりBIOSをアップデートしてしまった。具体的には1.0.5から2.0.11へのアップデートだ。不用意なBIOSのアップデートを原因とするオンボードのオーディオ機能の不具合に悩まされる経験が重なったことからBIOSのアップデートは避けてきたのだが、今回はMicrosoftアップデート内に紛れてアップデータが配信されてしまい、チェック漏れから万事休すとなった。

 今回のバージョンのBIOSでもオーディオ周りに幾つか不具合が発生している。例えばPC動作中にフロントのヘッドフォン端子からヘッドフォンを一旦抜くと、ヘッドフォンを刺し直そうが別のヘッドフォンを刺そうがOSがヘッドフォンを認識しない。より厳密には、OSから見てヘッドフォン端子自体が無い状態となる。ヘッドフォンの再認識には、ヘッドフォンを端子に刺した状態での再起動が必要だ。このような状態発生のひとつの回避方法は、ヘッドフォン用の延長ケーブルをPCフロントのヘッドフォン端子に刺して絶対抜かず、ヘッドフォンの交換は延長ケーブル経由とすることである。もうこの時点でハードウェアとOSの連携が取れなくなっていることが分かる。この連携を担うものこそがBIOSなのは言うまでもない。

 結果として延長ケーブルのメス側端子が常にが手元にある状態となり(PC本体はお気持ち遮音と綺麗なエアフロー経路の確保を目的とした簡便な仕切り板の向こう、1m強離れたところに置いてある)、ヘッドフォンの交換の億劫感がエラく下がった。

 次いで原因その2。メインDAWであるCubase Proのバージョン11へのアップデートに合わせてGeneric ASIOドライバーもアップデートされたが、BluetoothヘッドフォンがDAWのアウトプットの選択肢として表示されなくなった。ASIO4ALLやFLStudioASIOと言った他のASIOドライバーでは選択肢として表示されるので、これはOSではなくドライバーの問題だろう。ただ私の環境では、DAWとASIOドライバーとの相性からGeneric ASIOドライバー以外の選択肢は無いので、SONY WH-1000XM3をCubase Proで使いたければ有線接続するしかない・・・ん?、有線接続ならBluetooth接続を原因とするレイテンシは気にしなくて良くなるぞ、アレ?

 最後に原因その3。まず、Sonarworks Reference4 Headphone Editionを後継製品のSoundID Reference Headphone Editionに最近アップグレードした。利用しているオンライン決済サービスからのクーポンなどを最大限活用し、かなりお得にアップグレードできた。次いで、Youtubeでお勧めされたシユウさんの動画 「【最強ヘッドホン】全ての音が見える『YAMAHA HPH-MT8』は、聴いてるだけで音作りが上手くなるぐらいヤバい。」を観て、さらにSonarworks Reference4でYAMAHA HPH-MT8の周波数応答特性を確認したところ「(少なくとも周波数応答特性に関しては)成程!」となったことが大きい。

 SONY WH-1000XM3の周波数応答特性は下図の紫のラインだ。黒い水平な直線が「味付け」の無いフラットな特性であり、私がモニタリング用ヘッドフォンに求めている理想の特性、作り手や送り手の意図した音が再現できる特性だ。50Hz以下の領域でも実際よりも大きな音で再生する特性となっているので、音がモコモコし易い。また1k~5kHz付近の音を実際よりも小さく再生する特性は多くのヘッドフォンで見られるが、6dbを超える再生音量の低減はやり過ぎだ。

対してYAMAHA HPH-MT8の周波数応答特性は下図の通りで、明らかにSONY WH-1000XM3よりもフラットだ。

 

 周波数応答特性がフラットな方が「音が良くなり得る」或いは「聞き心地が良くなり得る」理由は考えてみれば単純で、「プロが楽曲のマスタリング時などに使用している機器の音周波数応答特性が基本的にフラット」であるからに他ならない。作り手、送り手の意図通りの音が再現されるから、と言い直しても良い。

 「じゃぁさっさとYAMAHA HPH-MT8を買ったら?」と思ったあなたは正しい。だがヘッドフォンは実際に装着してみないと分からないことも多く、新型コロナ禍下の田舎暮らしの身にはなかなか実物に触る機会が作れない。まぁ金銭的に余裕が出てくれば、実物を触らないまま何かをポチりそうであることは否定しない。

 一方、「SoundID Reference Headphone Editionとやらがあれば、別にYAMAHA HPH-MT8なんて買う必要なくね?」と思ったあなたもかなり正しい。実際、ここで触れていないものも含めて様々な要因から現状の私はそういうポジションを取っている。故に「有線接続前提で」SONY WH-1000XM3がDAWモニタリング用に復帰した訳だ。何のかんのとノイズキャンセリング機能の利点はバカにできない、バッテリーの持ちも良い。物理的にはやっぱり重いけどね。

 とは言え、SoundID Referenceにもレイテンシがある。20~60ms台なので基本打ち込みしかしない私には許容範囲だが、録音する人には耐えがたいレイテンシだろう。故に「SoundID Referenceがあれば良くね?」と言うのはあくまで私のようなDAWの使い方をしている人間にしか当てはまらない訳で、YAMAHA HPH-MT8とかを使って低レイテンシとフラットな周波数応答特性の音を両立するのが王道なのは変わらない。

2021/05/16

ディストーションvstプラグイン「なに?!?」

 う~ん。「vstプラグイン」と言ってもDAW触ってない人には何のことすら分からんだろうしねぇ。個人的にはディストーションはほとんど使わないから出来の方は分からんし、「ネタとして面白いか?」と言うのも微妙だし、まぁ「あ、知ってますよ、それ。」って後で私が言えるためのアリバイ作りのためのエントリだね、今回は。

 あ、今回が1000エントリ目ですよ、本ブログ。 「非公開にするぐらいなら全部消す」主義なので、公開分だけで正真正銘1000エントリです。

 改めまして、「なに!?!」又は"NANI"はディストーションプラグインだ。Youtubeのおすすめにレビュー動画が出てきたのでその存在を知った。そのプラグイン昔からあったやん、と言われても私が知ったのは今日だ、今日なんだ、こればっかりは仕方ない。レビューアーが"but in all seriousness・・・(いや、マジで)"っぽい表現を使っていて、モノのネタ部分のせいでノリ自体に苦慮している様がうかがえるが、このエントリを書いている私だってそうだ。

 価格は$20(税抜き)で、レビュー動画の詳細欄にディスカウントコード(-10%とか)が書かれていたりするので、購入を考える場合は是非チェックを忘れずに。公式ページはここ、無料のデモバージョンもある。複数マシンで同時使用可のライセンス、ライフタイムフリー(一生涯無償バージョンアップ)ということなので、使い続けるならお安いのは確か。購入版は修正無し(Uncensored)、バージョンアップはアートワークのアップデートも含むとか辺りは、取り合えず笑って流しておきますね。

 プラグイン自体の説明は面倒くさいから吹っ飛ばして私自身がちゃんと触っている訳ではないので飛ばして、公式ページからコピーでお茶を濁しておこうを紹介しておこう。

"If only I had a plugin with large anime breasts"
- Every producer.

「アニメ調巨乳を備えたプラグインさえあればなぁ…」

- 全てのプロデューサー


  いや、ディストーションの良し悪しは本当に分からんのですよ、いやマジで。でも、レビュー動画内の音を聞いていると、なんか感じ良さそうではある。ただこのネタ・・・ロケットパンチ回収問題みたいなもので・・・服が元に戻る描写や元に戻ること自体に色々引っかかりを感じてしまう自分が居る。我ながら本当に面倒くさいヤツなのだ。そのような視点からは、空中元素固定装置の偉大さはコスモクリーナーに勝るとも劣らないのな。じゃぁ「揺れるのはどう?」と問われれば、「好みの揺れ方はある」とまずは答えておこう・・・俺は揺れる方が好

 あと、購入は18歳以上になってからだぜ!・・・と思いきや、ボタンは「無視(DENY)」と「確認(CONFIRM)」しかないじゃないですか、やだー。

2020/11/13

続・Cubase11へアップデート(年貢支払い)

 先のエントリでは触れなかったけど、Cubase Pro11のライセンス認証(アクティベート)には一悶着どころではないゴタゴタがあった。漠然と「認証サーバーかユーザデータベースの管理サーバーのどちらかにトラブルが出ているな」と考えていたが、どうも当たらずとも遠からずだったよう。

 今朝(11/13)、おそらく製品ユーザ全員に向けてと思われる、Steinberg社プレジデントからのメッセージのメールが届いた。状況だけ抜き出すと、認証サーバーの能力が負荷(認証要求)に追いつかず、ライセンス認証がなかなか進んでいないということらしい。このため、Cubase Pro11の「アップグレード及びアップデート」の販売を現在中止しているとのことだ。あとメッセージ中には、「ライセンスが失われることは無い」、と明記されている。まぁ、この一文が無いと未だ認証が成功していない人は不安だろう。

 ただ新規通常版やアカデミック版の販売は続けていることから、「サーバーの能力≒ハードウェアの計算能力」の不足がそもそもの原因ではなくて、ソフトウェア的なトラブルか、ストレージやメモリといったサーバーの構成機器のトラブルを起点として、一部サーバーの停止などによる「サーバーの能力≒ハードウェアの計算能力」の不足状態が発生しているのでは、と言う気はする。もともとブラックフライデー(今年は11/27)を予定に進めていた発売を前倒した結果、新規ハードウェアのテストが不十分だったとか初期不良を起こしたとか、知らんけどね。

 なお私の場合は、ライセンス管理サーバーへの接続エラーでCubase 10.5のライセンスがPC上のライセンス管理ソフト(eLicenser)上から消えてしまったり、24時間の時間限定ライセンスでいったん認証されたりと正直かなりスリリング。これらの状態、私のPC上とSteinberg社のアカウント情報データサーバー上とライセンス管理サーバー上とで、認証状態が一致していない時間があったということですからね。どの時点でどこの状態を「正しい」としてもらえるか、何気に怖い。人の手で1件づつロールバック(時間を遡ってデータを確認)しながら処理したとか、最悪のシナリオも否定はし難い。で、Steinberg社のWebページで確認できる私のアカウント情報が正しければ、私のライセンスが正常に認証された時刻はPCの電源を落としてから3時間後ぐらい、11/12早朝のことでしたとさ。

 ちなみに購入のためのショップへのログインにも当時は問題は起きていて、Steinberg社の日本語のWebページからはログインできず(リンクが壊れていたり、ログイン待ちが10分以上続いたり)、結局私は英語版のWebページからログインしました。と言うわけで、Steinberg社の今回のトラブル、実際には結構広範囲のものではないかと思ったり思わなかったり。

 あ、今見ると確かに「近日発売」になってますね。

2020/11/12

Cubase11へアップデート(年貢支払い)

 DAWのCubase Pro11を10.5からアップデート、占めて¥11,000也。Cubaseは毎年年末に0.5刻みでバージョンアップがあるため、「年貢」などとも呼ばれます。実は昨年の10.5はバグレベルの変な挙動が多かったので、結局ほとんど10(最終的に10.0.50)を使っていました。いや実際、ライセンスを持っている別のDAW、FL Studioへの本格的な移行も考えていたぐらいだったのです。

 Cubaseの助かるところはアップデートをインストールしても古いバージョンを上書きせずに残してくれること、つまり上述のように10.5をインストールした状態でも10など(残してあればや9や8でも)古いバージョンが使えることです。おかげで今年もCubaseユーザとして年末を迎えられそう・・・となりました。

 さて、Cubase Pro11ですが、新規機能についてはまだ語れません、なんといってもアップデートしてから未だ1時間程度ですから。なのですが、既にお気に入りと言うか、助かりポイントが多数ありました。代表的なもの2点だけ触れておきましょう。

  • 設定データの初期化が不要!!!
    少なくともCunbase8.5~10.5ではアップデート後に設定データの初期化が要求されていましたが、今回のアップデートではそれがありませんでした。結果、インストール完了から2,3分で、インストール前までアップデータ前のバージョンで編集していたプロジェクトを新しいバージョンで編集できてしまいました。設定データを初期化すると編集してきたファイル/プロジェクトの履歴が消えるし、プラグインデータベースも一からの作り直しとなります。これらは結構うざいんですよ。

  • とにかくイキナリちゃんと動く、10.5のような変な挙動なし!!!
    まぁ、10や10.5で編集してきたプロジェクトを読み込み、再生してみて、というレベルでのお話ではあります。VariAudioとか使いだしたら、10や10.5同様に初期不良的な変な挙動はあるかもしれません。が、10.5などは最初の起動段階で頭抱えるレベルに挙動不審でしたから、印象が全然違います。

 まぁ、ぽちぽち触りますか・・・

 今回はとっても参考になりました!つーか、アップデートのリリースを知ったのは昨夜のこの動画のおかげ、今年は例年よりアップデートが早くないかなぁ。

2019/12/08

ソフトシンセFALCONの勉強開始

 2017年ごろまで主力として使っていたソフトシンセはz3ta+2だった。z3ta+2は音作りし易く、当時としてもCPU負荷は小さめと良いソフトシンセだった。しかし、今やWindows10上での使い勝手の悪さなどを含めて色々と問題が出てきた。そこで私の健康状態が未だ良かった2017年、z3ta+2の置き換えを念頭にXfer社のSerumとUVI社のFALCONの二つのソフトシンセを思いきって購入した。

 さて、欲しい音が無ければ一から作る、或いはプリセットを編集するのが私の基本姿勢だ。だから音作りがし易い方が置き換えとして有望、更に言えばz3ta+2で以前に作った音を短時間で再現できる方が望ましい。ユーザインターフェース(UI)の分かり易さはSerumの方が圧倒的に勝っていたので、これまでは積極的にSerumを使ってきた。z3ta+2で作った音の再現も面白いように進んだ。

 Serumで単純なサイン波を出す場合の見た目は下のようになる。実はベロシティの取り扱いに癖がある(他の多くのソフトシンセと違い、ユーザが一から設定しなければならない)のだが、UIは直感的で分かり易い。
 が、如何せんSerumのCPU負荷はデカすぎた。今の私のPCとCubase10との組み合わせでは、6本もvstiとして挿すと再生時に音が飛ぶ飛ぶ。z3ta+2なら10本挿してもなんともないのとは対照的だ。

 そこで改めてググってみたところ、やはりSerumのCPU負荷は大きい方であること、対して FALCONのCPU負荷はz3ta+2程ではないものの小さい方であることが分かった。と言う訳で、急遽FALCONでの音作りの勉強を始めた次第である。

 で、FALCONで単純なサイン波を出す場合の見た目は下のようになる。一日前は「Program?Layer?Keygroup?何?何?」だったが、2時間程うんうん言いながら触ることで、なんとか音作りのフローと言うか、全体的な考え方と言うかが理解できたように思う。ただUIは、分かり易いとか見通しが良いとか言えるものではないよね、構造は論理的ではあるけど。UVI社のチュートリアルとヒント(日本語)が有って本当に助かった。
 現在はAdditiveオシレータを一から勉強中なのだが、これ自分にニーズがあるのかは未だ分かんないなぁ・・・。ちなみにサンプラーもあるよ。

 元はz3ta+2で作って(Thatness and Thernessのカバー(YouTube)で使用)、Serumで再現した簡単なベース音を、更にFALCONで再現してみた ^_^。これぐらいなら結構簡単かな。とは言え特性が同じフィルタは用意されていないから、フィルタのパラメータ調整は完全に耳頼り。

2019/12/07

EDIROLブランド製品とWindows10バージョン1803サポートの終了

 本ブログのキラーコンテンツ的エントリと言えば「Windows10でEDIROL PCR-M1が使えるようになったよ!」。2015年のエントリだが、未だに月当たり10回以上のアクセスがある。内容は、Windows10用ドライバがサポートされなかったEDIROLブランドMIDIコントローラを、Windows8用ドライバを使ってWindows10上で使えるようにする方法の説明だ。今では同じ内容をもっと丁寧に説明しているブログもあるので、なかなかにニーズがある情報のようだ。

 ただエントリで説明している方法は「マイクロソフト社的に推奨されないもの」なので、Windows10の大型アップデートを適用するとご破算、ドライバや設定は引き継がれない。そのため半年毎の大型アップデートの度に件のエントリ記載の手順を繰り返さなければならない。ちなみに私は、2017年夏のPCR-M1の故障を機にIK MULTIMEDIA iRig Key(Windows10のUSB接続MIDIキーボード標準ドライバが対応)を新たに導入した。このため、件のエントリで説明した方法が未だ有効なのかどうかは確認できなくなっている。

 で、この一カ月の件のエントリへのアクセス数が3倍以上に急増した。 一瞬「?」となったが、ちょっと思い当たる節もあったのでそれについて書いておこうと思う。

 Windows10のバージョン1803、つまり2018年3月バージョンのサポート期限が2019年11月いっぱいで切れた(筈)。このためだろう、バージョン1803を使用していたPCでは10月初旬ごろから盛んにバージョン1909(最新バージョン)へのアップデートを促すメッセージが表示されるようになった。と言うのも、親が使っている実家のPCがそういう状態になっていたのだ。色々な手を尽くしたものの実家のPCのアップデートは失敗し続けたため(結局、「コンピュータに加えた変更を元に戻しています」となる)、バージョン1909のクリーンインストールを余儀なくされた。

 ちなみにアップデートログによれば、アップデート失敗の原因は古いバージョンのWindowsフォルダのバックアップコピーの失敗だった。少し具体的に書くと、「古いバージョンのWindowsフォルダ」を含むドライブの指定が、本来あるべき「C:」ではなく「D:」となっていたのである。無いフォルダをコピーしようとするからエラーになる。ググってみると分かるのだが、同じ原因での失敗はバージョン8.1以前のWindowsからWindows10へのアップデート時に既に発生が報告されている。由緒あると言うか、これ、マイクロソフトに原因があるでしょ?

 さて、そのような経験を踏まえると、この一カ月ほどの間に(失敗はしなかったにしても)Windows10の予定外の大型アップデートを強いられた人は少なくないと思える。そしてこの予定外の大型アップデート適用が、上述した件のエントリへのアクセス数の急増の原因ではないかと推測している。実際のところはどうなのだろう?

 アクセスがあること自体、またエントリの内容が役に立ったということがあれば単純に嬉しい。と同時に、「ブランド消滅からほぼ10年、未だ愛されてるEDIROL製品があるんだなぁ」とちょっとほっこりした気分にもなりますね。

2019/11/25

Cubase 10.5、変

 Cubaseユーザの年末と言えばアップグレード、もちろん有料。「年貢」なんて言い方もされるDAW界の風物詩です。今年はバージョン10から10.5へのマイナーバージョンアップでした。

 さて、本日Cubase10.5(Win)を触ってみたのですが、挙動が色々と変。 ASIO設定周りのウィンドウの変な挙動(操作しなければならない新たに開いたウインドウが既に開いていたウインドウの下に表示され、実質的に操作不可になるなど)は明らかにバグでしょう。

 やっかいなのは、Cubase10で作成した同じプロジェクトファイルを読み込んだ時に、Cubase10とCubase10.5で「Outputでのトラックの音量バランスが別物レベルで違うことがある」こと。起きるプロジェクトファイルと起きないプロジェクトファイルがある訳です。ちなみに全トラックのオーディオインサートを無効にしても音量バランスは違うままなので、特定のvstエフェクトが無効化されたりクラッシュしたりが原因の可能性は極めて低く、まさに音量、フェーダーに関わる不具合のように見えますね。

 あと再現性が無いんだけど、プロジェクトファイル読み込み中にいつの間にか落ちていることが多々ある。有効にできないオーディオインサートFXがある。

 アップデートを重ねたCubase10も悩まされるレベルの細かな不具合がまだまだ残っていましたが、確認した範囲でそれらもきっちり10.5に引き継がれていましたね・・・

補足(2019/11/25):
 色々とアカンですね、不審な挙動が多すぎますよ10.5。暫くは10で行きます。

2018/05/26

使用DAW、見直し機会到来か?

 DAWソフトのFL Studioが20周年ということで、バージョン13~19をとばしてバージョン20となるらしい。Youtubeでも既にレビュー、新機能紹介の動画を多数見つけられる、つまり新規機能の振る舞いも含め、実際に動いている様を既に確認できるのだ。正直なところかなりにポジティブな印象を受けている。他DAWが先行して取り入れた機能を良いと思えば衒いも無く積極的に取り込む姿勢も今まで通り、バージョン20でついにMacにも対応するので更に普及が進む可能性が高い。

 FL Studioのライセンス形態は特殊だ。一度購入すればバージョンアップは無料、個人での使用である限り複数のPC/Macに同時にインストールしてよい。このようなビジネスモデルが成立するためにはFL Studioは常にユーザーを増やし続けなければならない。が、既に20周年を迎えていると言うことは、程度は不明だがそのビジネスモデルは成功しているということなのだろう。

 FL Studioはプロも含めてユーザーは多く、ネット上に蓄えられたノウハウも膨大、既にライセンスは所有済なので今後使い続けても追加費用発生は無い、なのに未だ使っているDAWはCubase・・・だからと言ってCubaseが好きだと言う訳ではないのだ。また別途、Bitwig Studioも評価中だ。

 と言う訳で、FL Studio20の登場は期せずして使用DAWの見直し機会を招いてしまった形となっている。

 さて、突然ながらここでかつて存在したDAWであるCakewalk Project5にご登場を願おう。私にとってProject5はいわば初恋のDAWとでも呼ぶべきものだ。そしてこのProject5のワークフローこそ、未だに私の理想とするワークフローに最も近いのだ。ちなみに下の動画の音声トラックはProject5による。ソフトシンセとオーディオを同時に使える私にとっては初のソフトで、Vocaloidの使用には便利だった。
 さて、Project5について多少詳しい仕様が気になる方はこのページで確認いただくとして、同ページから(勝手ながら)2枚の画像を転載させていただく。
 1枚目の画像はCubaseなどでおなじみのレイアウトに見えるが、それは見かけだけの話だ。MIDIデータやオーディオの素材は「クリップ」という単位で管理され、各トラック中の同じ色の帯状要素は同一のクリップと理解してもらって構わない。例えば1小節の長さのMIDIシーケンスを16回繰り返す場合、1小節のクリップを作成してそれを16個並べれば良い。この状態で16個中の1個のクリップを編集するとどうなるか・・・16個のクリップは「同一」のものなので編集内容は残り15個全てのクリップに反映される。またオートメーションも基本的にクリップに含める。

 2枚目の図は「グループマトリックス」と呼ばれたクリップの管理やクリップのトラック間での組み合わせの検討(アレンジの検討)のためのインターフェースで、Bitwig Studioのクリップランチャーは機能的にはこのグループマトリックスの正常進化版と言って良い。

 このような「クリップ」とそれに基づくワークフローの概念はCubaseには全く無い。そもそもCakewalkがProject5のクローズ後にリリースしたSONARにもクリップの概念が無く、更に操作性もProject5と全く変わってしまった(Project5のワークフローは多くのユーザーからは好評では無かったようだ)。このため「MIDIノートエディタの操作性がProject5に相対的に近い」という一点を実質的な理由として、私はあっさりとSONARからCubaseに乗り換えてしまったのである。

 FL Studio、Bitwig Studioともクリップの概念を持ち、特にBitwig StudioではProject5とほぼ同じワークフローも実現できるワークフローの選択幅を持つ。「ならばBitwig Studio一択ではないか」となるのが自然な流れなのだが、ここでは具体的には書かないとある2つの機能をBitwig Studioが未だ備えていないのが障害となっている、う~ん、早く導入してくれないだろうか(とか言いつつ、障害の一つはOzoneなどのマスタリング用プラグインなどでなんとかなるっちゃなる。ほぼ同じ障害を持つFL Studioでも、公開されているアマチュアのデータを見るとOzoneが刺さっていることが多く・・・っつーかOzoneを抜くと楽曲自体がふにゃふにゃで聞くに堪えられなくなるくらいにOzoneに頼り切っていることが少なく無い。Cubaseならミックスコンソールだけで・・・時間はかかるが・・・Ozone Elementが自動でやってくれるぐらいまでのことはできる)。

 他方FL Studioのクリップの概念はProject5やBitwig Studioのそれとは違う。ただし、おそらく「トラックの概念が違う」せいで「クリップの概念の範囲が違って見える」と理解するほうが妥当だろう。Project5のグループマトリックス、Bitwig Studioのクリップランチャーともに縦軸はトラックだが、FL Studioの同様のインターフェースの縦軸は音源(例えばソフトシンセ)である。

 FL Studioにおいて(実はBitwig Studioも)「クリップに含める範囲」は、「クリップが元々MIDIデータだろうがオーディオデータだろうが、クリップ中でオーディオデータに変換される。オーディオ変換後はクリップ内では処理を区別しない(そもそも区別する理由が無い)」という考えに基づいていると個人的には見る。故に、FL Studioのクリップにはエフェクターなどのオーディオデータ変換後の処理も含めることになる。

 この考え方は「素材を組み合わせる」という形のワークフローにおいてのみならず、プログラム内での処理としても極めて論理的、合理的だ。しかし、ミキサーのインターフェースが旧来のミキサー卓、つまり「Project5、Cubase、Bitwig Studioらにおけるトラックの基本概念のまさに実体、元ネタ」をただ模しているため、クリップ出力後のシグナルフロー(結線状態みたいなもの、チャンネル番号のような数字だけみせられてもねぇ・・・)が一望できず、慣れない私には物凄いストレス源となる。特に音量バランスや定位の調整のためにクリップまで戻る必要があるのは、「そうしなくても良いワークフローを使用者(私)が確立」できない限り非効率とならざるを得ない。ミキサー部だけは、他の部分の持つ論旨性、合理性とマッチングしていないのは明らかで、私にとってFL Studioが一番の選択肢とならない理由となっている。

 個人的な考えとしては、FL Studioのアーキテクチャーはノード編集型のインターフェースに向いている気がする。良い例ではないが、例えば下図は典型的なノード編集型のインターフェースである。ノードと呼ばれる各要素の入力、出力の有無、数、内容だけでなく、ノードの入出力端子間を線で接続することでノード間のシグナルフローの全てが明示化可能であるとともに、シグナルフロー自体をGUIにより編集もできる。FL Studioのワークフローの持つ論理性、合理性は、マルチトラックテープなどを使っていたデジタル化以前のワークフローと多くの点で整合しないどころか、むしろアンチテーゼと見える部分も多い。そのため、「トラックの概念そのものと言って良い旧来からのミキサー」を模したインターフェースが、他の要素とめちゃくちゃ相性が悪いのは致し方ない。失敗などとは思わ無いが、どうしようもなく中途半端なところであり、「この中途半端さが受け入れられない(私のような・・・ただし私はもう購入済なのでセールス的には貢献した側)タイプの人間」には拒絶され続けられるだろうと思う。「トラックの概念」自体は残そうが壊そうが変形しようがどうでも良いのだ。ワークフロー全体の整合性、見通しの良さの問題なのである。
  ミックスを施した後の出力を起点に出来上がり(最終出力)の調整を考える方法をトップダウン方式、ある程度作り込んだ素材を組み立てて得られた出力を起点に素材の微調整を考える方法をボトムアップ方式とするならば、Cubaseは前者、FL Studioは後者であろう。ではProject5やBitwig Studioはと言うと、実のところ「両者の良いところ取りのポテンシャルを持つが、完全な域には未だ至らず 」といった感じじゃなかろうか。

 なお私見ながら、FL Studioのワークフローにおけるノウハウは初心者でも導入し易いため、出来上がりのレベルの底上げが期待できる。が、同時に似たり寄ったりの楽曲が量産され易く(つまりFL Studioというジャンルの出現だ)、また他楽曲との差をクリップレベルだけで出そうとするために、楽曲全体のバランスが悪くなったりこけおどしの音に頼ったりと劣化版コピーも生まれがちだ。

 FL Studioのむき出しのワークフローをそのまま使うということは、出来上がりのイメージが明確にある場合に限るべきだ。センスの良し悪しが出来上がりに露骨に反映されると言いかえても良い。そういう意味で、自分のセンスに賭けることに自信の無いユーザーは、敢えてFL Studioを使わないという選択肢もあると思う。とは言え、私の見たところFL Studioのインターフェースなどが暗黙の裡に示す(だが頭空っぽにして見ればむしろむき出しに見える)ワークフロー自体は論理的故に硬直的ですらあるが、同時に頑丈で破綻しにくく無茶が効きそうだ・・・FL Studioの一つのミキサーチャンネルには最大幾つのソースの出力を送りこめるのかなぁ・・・何か起きないかなぁ。

 繰り返すが、FL Studio20の登場予告により期せずして使用DAWの見直しを意識せざるを得なくなっている。困った事に、この見直しでは対象である複数のDAWの優劣を判断する訳ではない・・・(FL Studioの持つ圧倒的なコスト優位性を無視しても)文字通り、どのDAWの良さ、特徴を選びますか、という選択の問題なのだ。


追記(2018/6/11):

 Project5(バージョン2)はWindows10でも動き、実は現在のPCにもインストールしてました(汗)。昔作ったプロジェクトファイルも発見したので、動作している状態の動画を上げておきましょう。曲はウズベクの有名な(汗)ポップス、"Yalla habibi(Ялла Хабиби)"のカバーです。なお、当時使用していたオーディオループやワンショットオーディオデータが全くインストールされていないため、アラブ系パーカッションは全滅しています。またプラグイン画面がキャプチャされていないので、マウスカーソルの挙動が不審ですね。
 なお、楽曲のオリジナルはこちら。
 さらにオマーケ。

2015/11/15

Windows10のメジャーアップデートで、iTunes購入不能再び

Windows10へのアップグレード後に生じた問題と言えばざっくり以下の通り。
  1. EDIROLのMIDIコントローラ PCR-M1のドライバがインストールできない。
  2. Cubase Pro 8で音飛びが発生、異常な高CPU使用率。
  3. iTunesで楽曲などの購入ができなくなる。
上の二つは解決(1,2)し、最近のWindows10のメジャーアップデート(TH2)後も全く問題ない、が、最後の問題が再び発生した。楽曲購入時の症状は以下のようなものだ。 
  • 楽曲購入ボタンを押すと、確認のダイアログボックスが表示される。
  • ダイアログボックスの購入ボタンを押すと、「iTunesへのアクセス」を開始するが一瞬で終了。エラー表示は無い。
  • 購入楽曲はダウンロードされない、購入履歴もない。つまり、購入自体ができていない。
まぁ、課金だけされて購入品が入手できていないという訳でもないので実質的な不利益は無いのだが、如何せん気持ち悪いし、そのままではいつまでたっても欲しいものが購入できない。 

 実は先々月にも同じ状況になったので、Apple社のサポートにもコンタクトを取ったのだ。サポートからは
  • iTunesをアンインストールしてから再インストールしてください
という連絡を受けたのだが、結論から言えばこの方法では解決はしなかった。と言うか、ファイル破損でも起きていない限り、こんな方法では解決する筈もない。そこで「いつもの手」を使ってみたところ見事に問題は解決した。「いつもの手」とはずばり、
  • アプリを「管理者として実行」して、1回問題を再現する
だ。件のiTunesの問題の場合は「管理者として実行」しても発生する。しかし、次回の通常実行以降には問題は発生しない。

 Windows10では特定ファイルへのアクセス制限などのセキュリティがらみの制限がWindows7より厳しいが、セキュリティ絡みのメッセージはむしろより表示しなくなっている。このため、セキュリティ絡みの問題は原因特定がより困難になっている。このiTunesの問題がセキュリティ絡みかどうか分からないが、対処療法としてはこれで2回解決に成功したことになる。

 ちなみに、Cakewalk社のシンセZ3TA+2やサンプラD-Proの実行には「管理者権限」が常に必要で、vstiの実行も同様だ。だからDAW上でこれらvstiを使う場合には、DAW自体を常に「管理者として実行」すればいい。

 この種の話をすると「Macにすれば?」と言う人が当然居るのだが、すまん、俺BSDが大嫌いなんだわ

2015/10/25

Cubase Pro 8、 Windows10対応!

と言うか、Windows10側のアップデートで互換性の問題が解決したらしい。

 本件に関するスタインバーグのリリースは10/22、直近のWindows10アップデートをチェックすると10/17に所謂「累積的な更新プログラム」がインストールされていた。

 「この1週間程は以前にも増してCubase Pro 8の調子がいいなぁ~」などと思っていたが、どうも気のせいばかりではなかった様だ。

2015/09/18

Windows10環境なら Cubase Pro 8.0.30アップデートは吉

 Cubese Pro 8はまだWindows10対応していないが、最近公開されたアップデータ(8.0.30)はWindows10ユーザーなら当てておいて損はなさそうだ。

 8.0.20をWindows10上で使うと、音飛びが発生する場合があった。
  • Asio-Guard機能ををONにすると、音飛びが頻発
  • DirectX Full Duplex Driverを使うと音飛びどころの騒ぎではなく、どっどっどっって感じで周期的にしか音が出ない。
これらの症状は8.0.30アップデータでほぼ解消した。特に後者の発生はCPU負荷とは無関係だったが、アップデート後はCPU負荷が平均50%ぐらいのデータなら、1時間鳴らし続けても音飛びが発生しなかった。

 8.0.30アップデータでASIO-Guard機能がマルチCPUに対応したということだが、おそらくこの辺りが効いているんじゃないかと思う。

 ただCubase Pro 8がWindows10に非対応とされる原因は、Windows側の処理優先順位管理機能の変更にあるとされる。つまり、Windows7や8ではリアルタイム性が要求される楽曲再生処理を優先するようにCubaseから設定できたが、Windows10ではそうはできないらしい。

 とは言え、Windows10はMIDI、オーディオ周りがDAW向けに完全に再設計されている。Cubase ProのWindows10対応が本質的なものであれば、結構快適になるんじゃないかとの期待もできる訳だ。

2015/09/04

Protools | First、エラスティックプラグイン動かず…

 以前のエントリで紹介したことがあるフリーで使えるDAW、"ProTools | First"のセットアップファイルのダウンロードの順番がやっと回ってきた。早速インストールしてみたのだが・・・。

 私の"ProTools"への興味は、「『エラスティック』の出来」の一点に尽きる。「エラスティック」はオーディオデータのピッチ、タイミング、テンポを変更する機能で、プラグインの形で本体とともに提供される。何に使えるかというと、例えばVocalodエディタから書き出したオーディオデータのピッチ補正だ。メインのDAWである"Cubase Pro"も同様の機能を持っていてピッチ補正には重宝するのだが、音の立ち上がりのタイミングや音自体の長さの変更といった時間方向の編集をすると波形がとたんに歪んでしまう。ノイズが被ったような音にすぐになってしまうのだ。

 で、「エラスティック」である。結論から言うと何も分からなかった。"ProTool | First"を速攻でアンインストールしてしまったからだ。理由は簡単で、よりによって「エラスティック」のプラグインだけが本体によって「動作しないプラグイン」に分類されて使えなかったのだ。

 Windows10のせいか?・・・う~ん、残念。

2015/08/31

Windows10でEDIROL PCR-M1が使えるようになったよ!

[追記(2022/11/30)]
頂いたコメントの中に「(PCR-1は)Windows8のドライバでなくWindows7のドライバで同様にやってみましたら出来ました!」との情報がありました。
[追記ここまで]
 
 以前のエントリでも触れた通り、USB接続のMIDIキーボード/コントローラであるEDIROL PCRシリーズはWindows10がサポート外となった。ただ、Windows10のドライバモデルはWindows7や8と基本的に変わらないので、Windows7や8用のドライバが使える筈なのだ。しかし、実際のところRolandで公開されているWindows8.1対応のドライバセットアッププログラムを実行してもドライバはインストールされない。状況としてはWindowsのバージョンチェックの段階ではねられている感じだった。

 とは言え、やっぱりPCRはWindows10でも使いたい。震災の経験から音源ハードウェアを一掃してしまったためコードひとつ拾うこともできない。PCRが使えない状況では、DAWを触ることすら億劫になっていたというのが実態だった。

 さて、そんな中ググって見つけたのが、Windows7/8/8.1対応のドライバセットアップファイルを用いて、Windows10にPCRドライバをインストールする方法だ。オリジナルの手順はCakwalkのユーザーフォーラム(英語)に記載されている。 結果から書けば、Windows10でPCR-M1が使えるようになった。CubaseやKONTAKTからもちゃんとWindows7時代と同様に認識される。

 ドライバのインストールには以下の2点をクリアする必要がある。
  • Windows8用のドライバファイルをWindows10用に偽装する
  • インストールに必要な「(Windows10用の)ドライバの署名」が無いが、Windows10に無視させる
では具体的に私が実際にやった手順を書いていこう。私のWindows10は64bit版だ。32bit版の場合は適宜対応する部分を読み替えて欲しい。まず1点目のクリアからだ。
  1. Windows8/8.1対応のドライバセットアップファイルの圧縮ファイルをRolandのサイトからダウンロードする。私が使ったのはpcr_w81d_v101だ。
  2. ダウンロードした圧縮ファイルを展開し、ディレクトリ
    [上位ディレクトリ]\pcr_w81d_v101\pcr_w81d_v101\Files\64bit\Files
    内のファイル
    RDIF1027.INF
    をテキストエディタで開く。Window10のデフォルトではファイルをダブルクリックすればメモ帳で開かれる。
  3. テキストエディタで2ヶ所ある文字列
    Roland.NTamd64.6.2

    Roland.NTamd64.10
    に書き換え、ファイルを保存する。おそらく書き換える数字はWindowsの内部バージョンだ(6.2はWIndows8、10はWIndows10)。つまり、Windows8用のドライバファイルをWIndows10用に偽装したことになる。
    (Windows10 TH2のバージョンナンバーは10ではなく1511になった。変更後の数字は10ではなくて1511にしないといけないかもしれない。)
一見するとこれでもうドライバがインストールできそうに思うが、そうは問屋が卸さない。セットアップファイルにはWindows10での動作やセキュリティ上の安全を保証する「ドライバの署名」が含まれていないからだ。 そこで2点目をクリアする手順に進もう。

 ここからは少し面倒臭いが、要は「ドライバの署名が無くてもユーザーの責任でドライバがインストールできる特殊なモード」でWindows10を起動することで、署名が無い問題を回避してドライバをインストールしてしまおうという算段だ。
(Windows10 TH2では、「シフトキー+再起動」で「オプション選択」以降が選べるようになった。この方法を使うと以下の1、2の作業は不要。)
  1.  コマンドプロンプトを起動する。
    [スタート>すべてのアプリ>Windowsシステムツール>コマンドプロンプト]
  2. shutdown.exe /r /o /f /t 00
    とタイプしてEnterキーを押す。
  3. 「再起動しています」という画面になってしばらくすると、「オプションの選択」画面が表示される。以降は下記の通り選択していく。
    トラブルシューティング>詳細オプション>スタートアップ設定
    「再起動」ボタンを押すとPCが再起動される。
  4. 再起動後、「スタートアップ設定」画面が表示されたら、F7キーを押して「7) ドライバー署名の強制を無効にする」を選ぶ。
  5. Windows10が起動されたら、 先程保存したファイル
    RDIF1027.INF
    を右クリックし、コンテクストメニューから「インストール」を選ぶ。
    ダイアログが表示されるので、「強制的にインストールする」みたいな方を選ぶ。
エラーを示すダイアログが表示されなければドライバのインストールは成功だ。

 デバイスマネージャー上でもインストールされていることが確認できるね!

2015/08/07

【補足】 いくぜ!Windows10!(その3) Cubase Pro 8の動作チェックなど

 Cubase Pro 8 のWindows10での操作確認結果は先行するエントリを参照してもらうこととして、補足事項だ。

 スタインバーグのウェブサイトによれば、音飛びが発生するためCubaseを使っているPCのWindows10へのアップグレードは推奨されていない。ただ、私の環境では音飛びらしい音飛びが発生していなかった。そこで設定やASIOドライバを色々と変えて動作を調べたところ、「ASIO Guardを使うと音飛びが頻発する」ことが分かった。

 ASIO Guardは本来音飛び発生などを抑制する機能だが、少なくとも私のWindows10環境では音飛びをむしろ誘発するようだ 。原因はWindows側のオーディア周りの仕様変更らしく、Cubase側の対応には少し時間がかかるのではないかと思う。

2015/04/05

Cubase vs マルチコア!?

 DAWアプリCubaseはバージョン6から使っていて、今は8。だけど、ものすごく基本的なところでアプリの設定を理解していなかったことが判明。

 事の始まりは、Reaktor 5上でKontourアンサンブルを使おうとするとCPU負荷率が頻繁に100%を打ってしまって音がぷつぷつ切れてしまう、と言うもの。Reaktor 5はその仕組みから基本的に高CPU負荷率が避けられないのだが、単体でCPU負荷率が80%を瞬間的とは言え超えてしまっては使い物にならない。せっかくPCもパワーアップしたのにねぇ。

 そうは言ってもちょっと変な気がしたので、詳細なCPU負荷特性を調べてみようとタスクマネージャーを立ち上げてみたところ・・・あら、CPU負荷率は12%前後じゃないですか。

 ・・・12.5%×8=100%・・・ふぁっ!?(ぴこーん!)

 PCのCPUは4コア、HT(ハイパー・スレッディング)も使っているのでスレッド数は8。 すかさずCubaseのデバイス設定のウィンドウを開いて「マルチプロセッシングを有効化」をOFFにすると、Cubase上に表示されるCPU負荷率が一気に減少・・・どころか0表示になってしまった。当然音が切れることも無くなった。今日の今日まで「マルチプロセッシングを有効化」をずっとONでCubaseを使ってきていたのですが・・・ん、CPU負荷が取得できないだけかな?

 まぁ、「Cuabseで60トラック・・・」といった他人のウェブ上の記述などに少なからず違和感は持っていて、「自分の環境はなんでこんなに非力?」と気にはなっていたのですが、こんな落ちとはあんまりな。旧PC(4スレッド)では実力の1/4で使っていた訳ですねぇ、とほほ。

2015/03/29

"Pro Tools | First"とな!

 "Pro Tools"は、そもそもDSPボードなどのハードウェアとソフトウェアを組み合わせたHDレコーディングシステムとして生まれた。現在でも文字通りプロ仕様のHDレコーディングシステムとして確固たる地位を保っている。一方、機能的にはDAWシステムとしても進化し、製品ファイリーにはソフトウェアオンリーのDAW製品もある。


 「DAWと言えば"Cubase"か"Sonar"」と言われた時代もあったが、"FL Studio"や"Bitwig Studio"などの登場で、いよいよDAW界?も次世代のデファクトスタンダード争いが激しくなってきた。これは3DCGソフトウェアにおけるほぼ15年前の状態に極めて近く、一気にソフトウェアの淘汰と住み分けが進む可能性がある(3DCGソフトウェア界?では爆発的に増えたスプラインベースのモデリング手法がほぼ絶滅し、ポリゴンベースのモデリング手法への淘汰が進んだ)。"Pro Tools | First"の登場は、エントリーレベルでの競争激化を引き起こす可能性があり、かつ、それに飽き足らなくなったユーザーのアップグレードパスが明確である点は見逃せない。

 個人的にはリリースされたら触ってみて、オーディオ編集機能がどれほどのものか是非確認したいと思っている。でも、専用以外のAAXプラグインは使えないんだよなぁ・・・この点は「すでに定番DAWと定番プラグインを持っているユーザー」には魅力が無い訳で、触ってももらえない可能性が高いばかりで戦略的には失敗だと思うんだけどね。